七人の敵

男、閾を跨げば七人の敵と数多なる素晴らしきものごとあり。 都会から山河海島まで、外出先での徒然を。

レ・ミゼラブル - LES MISERABLES - 於 ユナイテッド・シネマとしまえん 3スクリーン

今月中旬観賞。

感動の嵐・号泣・動員記録更新・・・絶賛の声が絶えない中、少し身構えて銀幕に臨んだ。
そしてそれは噂に違わぬ壮大なスケール。
ミュージカルの舞台にはライブの興奮があるのだろうが、
映画になってその映像のスケール感はまた違った意味で迫力を生んでいたと思う。(それでも152分はまだ短い)

ユゴーの名作であり、ストーリーは知らずともそのタイトルは誰もが知るところだ。
実際、自分も内容を殆ど知らない観衆のひとりで、予備知識も入れることなく足を運んだ。
観てみれば古典ゆえに分かり易く素直な展開。
現代劇に求められがちな複雑で破綻を危ぶむような捻りはなく、スゥと気持ちが物語に入り込める。
その時代の大きな流れの中で個々の人間がどう生き、死んで行ったのかに正面から向き合う。そんな作品であった。


LES MISERABLES
(C) Universal Pictures


これは古典なのでネタバレは気にせずに書き進めよう。

伝え聞いたとおり、哀れで切ない物語であった。
兎に角、泣く、泣ける、泣かせると呪文のように聞かされていたから、
如何ほどのものかと身構えていたせいもあるかも知れない。
やはり映画館でビスビス泣くのは避けたい。 そう云う用心。 それも働いていたのだろう。
しかしそれを差し引いても、涙腺が緩むかたちでの感情の昂ぶりはなかったのだ。
結局、自分は最期まで涙することはなかった。

不遇のうちに命を落とす人々。 まずはそこに感情は揺さぶられる。
しかし観る限り、彼等の多くは絶望のうちに逝くことはなかった。
フォンテーヌはジャン・バルジャンがコゼットの後見人になると云う約束に安堵しながら息を引き取ったし、
叶わぬ恋に苦しんだエポニーヌも、その最期は愛するマリウスの腕の中で迎えた。
軍の銃弾に倒れた少年や若者達、彼等も自らの確信の下に誇りを持って死を受け入れていた。
自らの生き様への否定の中で身を投げたジャベールでさえ、
抗いながら死んで行ったわけでなく、自らの選択の中で冥府へ旅立った。
そして逃げに逃げて生き抜いたジャン・バルジャンが最後の最後、コゼットに看取られながら見せた穏やかな表情・・・。

世の中はその殆どが理不尽なものごとで出来ている。
人はそれぞれの立場でそれを受け入れて生きて行くしかない。 それは特別なことではなく。
もちろん辛さの程度は様々だ。 しかしそれを他人と比べたところで道は開けないのだし。
(そう書いて見たところで、自分の送っている平穏な日々が言葉を空疎にしてしまうのだけれど。)

少なくともここで描かれる死に「ああ、無情。」と思いが沸き立つことはなかった。
最後に見えたのは希望の光と穏やかな安らぎの瞬間であったから。

そして観終えて、この劇中に生きた人々やこれを観て感涙にむせぶ観衆に思いを馳せる時、
人は世界を創っているものごとが百あるとしたら、そのうちの九十九が理不尽なことに涙するのではなく、
最後に残っていたひとつを知った時に涙するのだなと、そんなことを考えていた。
 
 
  1. 2013/01/31(木) 17:25:00|
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『 冬 』 三三 独演会 於 なかのZERO 小ホール / 平成二五年一月二八日

だくだく / 三木男
しの字嫌い / 三三
三人無筆 / 三三

(仲入り)

三味線栗毛 / 三三


この三三独演会は19時半と遅めの開演だが、18時半には仕事のメールを送り終えて事務所を出た。
中野に馴染みの眼鏡屋があり、そちらに眼鏡をふたつ持ち込んで調整して貰うためだ。
遠近両用のレンズはフレームの歪みで焦点がずれるが、徐々に歪むから気づかぬうちに見辛くなっている。
ふたつとも歪みを直しキレイにして貰い、その後ユニクロにも寄り道したがこちらは無駄足になった。

なかのZEROが会場の時は途中にある北国(ほっこく)と云うラーメン屋に寄ることが多い。
何てことはない町の普通のラーメン屋だが、今回はここで炒飯を食べてから会場入りするつもりだった。
ところが北国は休みであった・・・困った、口はすっかり炒飯モードだ。
開演まで30分あったので駅前へ引き返すとチェーン店が目に留まり迷わず入る。
しかしメニューを見ると炒飯はセットものの半炒飯しか見当たらない。
店員に訊ねるとやはり単品の炒飯は無いと言うので醤油ラーメンの半炒飯セットを頼んだ。
やがて来たサービスエリアで出すようなラーメンを啜り、可もなく不可もない炒飯にありついた。
ふと、ラーメンを頼まず半炒飯ふたつって頼めたのかなと妙なことを考えている自分がいた。

そのラーメン屋で隣に座った男二人。水商売のスタッフらしく耳に入って来る会話はキャバ嬢の面接が話題のようだ。
すると面接を受けるコが駅前から電話して来た模様。彼等の店から迎えを出すよう電話で先方の服装を知らせている。
程なくラーメン屋を出るとまさにその服装の女の子と、先ほどの二人組と同じ風体の男とすれ違った。
女の子は派手な化粧をしたスラリと脚の長いスタイルの良いコだった。 ・・・でもオレなら指名しないタイプ。
そんなこんなで結局会場には二番太鼓が鳴る時分に到着。 座って間もなく緞帳が上がった。

三木男は5人の二ツ目が客の投票で順位をつけられる勉強会でビリだったとぼやく。
やったのが 「 だくだく 」 で、惜しかったわねと声をかけて来たお客に投票してくれたのかと訊ねたら、
投票した“ つもり ”と返されたと 「 だくだく 」 の内容に絡めてまくらを落とした。
それからの 「 だくだく 」 である。ビリになったとぼやいた根多を聴かせるのかと・・・このまくらは考えものだな。

途中文菊を挟んだが年末からここまで白酒が続いた。 あのグルーヴでずっと来たので三三が随分渋く感じる。
「 しの字嫌い 」 は会話の中で “ し ” の付く言葉を禁じる噺だが、
聴いていて間違えて “ し ” が出ないかと妙な集中力が働いてしまい疲れる噺だ。
演り終えて三三もホッとしましたと言う。 短い噺だが演っている方も相当に集中力が必要で疲れるようだ。
「 三人無筆 」 は初めて聴く噺。 こう云う町人ばかりが出て来る噺も結構好きである。
侍が出てくると世界がうんと芝居がかってくるが、町人ばかりだと日常の出来事に思えて近しく感じる。
「 三味線栗毛 」 は個人的には微妙なポジションにある噺だ。
最後は錦木が検校に取り立てられてハッピーエンドではあるから良いのだろうが、
途中で錦木が惨めに病臥するところがどうにも印象深く、胸中にモヤモヤしたものが残り好きになれないのだ。
「 心眼 」 や 「 景清 」 も苦手な部類の噺だし、自分には盲人が出て来る噺が合わないのかも知れない。

前日は蕎麦屋でかなり飲んだので、この日はまっつぐ帰ると決めていた。
ふと道順を思い浮かべると大した距離ではないので試しに歩くと20分少々で家に着いてしまった。
運動不足の足しにもならないが、道中に酒の誘惑が無いのは健康的かなと思ったりして。
 
 
  1. 2013/01/29(火) 12:15:25|
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『 とみん特選小劇場 第41回 師匠と一番弟子 』 雲助・白酒 親子会 於 紀伊國屋ホール / 平成二五年一月二七日

狸の札 / まめ緑
初天神 / 雲助
松曳き / 白酒

(仲入り)

転宅 / 白酒
夜鷹そば屋 / 雲助


紀伊國屋ホールはホール落語の会場としては老舗だが、自分は今回が初めてであった。
新宿も久々、友人絡みで西口地下ロータリーのイベント広場へ寄ったり、無印良品へ寄ったりと、
所用を済ませながら会場入り、日曜昼間の会のせいかどこかのんびりしていて、
客層も普段から落語を聴き慣れている感じではない反応が目立っていた。

雲助の 「 初天神 」 は凧揚げまでやるのでこの噺を堪能出来る。
それでいてしつこくやるとダレてしまう件は割愛若しくはサラリと演るので、
筋を良く知っている客には聴き易く退屈せずオイシイとこ取りな感じがあって好きである。

続いて白酒の 「 松曳き 」。 これは白酒でしか聴いたことがない噺だが、かなり面白い。
おそらく白酒ならではの演出も相当に組み込まれていると思われ、
他の噺家で聴いてもここまで面白くないのではと想像する。
だから演るひとが少ないと勘繰ってみたりもするのだが、実際はどうだろう。

気分的には仲入りまでで十分満足してしまった。
「 転宅 」 も 「 夜鷹そば屋 」 もおまけに聴いて帰ったような心持ちである。
「 夜鷹そば屋 」 の最後の最後、孤独な若者・惣吉のいちばんいい台詞のところで携帯電話が鳴ってしまった。
小さな音であったがそちらに気が行ってしまい少々残念であった。
鳴らした本人と周りの人たちは尚更であったろう、惜しい。

はねてから、今度はメガネ屋を二三廻ってから高円寺へ。
先日NHKの 「 美の壷 」 でやっていた波佐見焼に興味が湧いて調べたところ、高円寺に扱う店があったのだ。
行ってみると女性が喜びそうな什器を扱う小さな店で波佐見の品が何点も陳列されていた。
飯碗が欲しくて幾つか見た。 気に入ったのがあったが、この日は見るだけにして店を出た。 改めて買いに行こう。

「 夜鷹そば屋 」 を聴いたので蕎麦屋で飲んで帰ろうと、以前飲み仲間から教えて貰った店の暖簾を初めて潜った。
肴の種類が豊富でなかなか飲ませる店であったが、銘柄を指定して燗を頼むとお勧め出来ないとやんわり断られた。
燗酒は燗酒用がいちばん美味しいし、安いですからと。 (因みに燗を拒まれたのは刈穂の超辛口)
例によって銘柄も分からない品書き、熱燗は冷遇されることが多い。 まぁ店の流儀だ、従うしかない。
それはそれとして気の利いた摘みで心地好い晩酌を楽しめたのだが、最後の最後で少々問題発生。
頼んでいない鮭トバが出て来た。 頼んでないと云うと、いや頼まれましたよとキッパリと答えて来る。
その若い男性店員の目にはどこか強情な酔っ払いを諭すような表情が伺える ・・・うーむ、猪口才な。
まぁそこまで云うのなら置いて行けと頷いて、何も無くては食えないので熱燗をもう一本持って来いと言いつける。
釈然としないまま暫し腕組みをして考えて、どこで間違いが起きたのかハタと気づいた。
お兄ちゃんを手招きして呼び戻す。 さっき頼んだ かけ蕎麦は通っているかな? そこでお兄ちゃんの表情が変わる。

鮭トバ ≠ かけ蕎麦

誤解は解けて鮭君は帰って行った。 程なくかけ蕎麦の登場。 あぁ、熱燗が一本余計だよ。
クイクイとお銚子を空けて蕎麦へ移る。 うむ、蕎麦は好みの味だ。 出汁がきいていて飲んだ〆になかなか良い。
蕎麦を食べ終えてお勘定。 お兄ちゃんは詫びの言葉と次回使える五百円引きの券をくれた。
確かに多少カチンと来たがこちらも酔っ払い、聞き間違いは当方の呂律にも因があろう。 最後は笑顔で帰ろう。
それに絶賛とまでは行かないが、一回で見限るにはちょっと惜しい店だ。 もう一度、様子を見てみようか。
 
 
  1. 2013/01/28(月) 12:45:46|
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『 DOURAKUTEI出張寄席 古今亭文菊 真打昇進披露落語会 「華」 』 於 牛込箪笥区民ホール / 平成二五年一月一七日

笊屋 / 志ん八
紙入れ / 菊之丞
壷算 / 菊龍
親子酒 / 市馬

(仲入り)

真打昇進披露口上 菊之丞・文菊・菊龍・市馬

奇術 / マギー隆司
抜け雀 / 文菊


この券を確保した後に文菊の独演会も開かれることになって、
師をたっぷり聴くにはそちらだったなと少々悔やんだ。
こちらはこちらで久々に市馬も聴いたし、悪くはなかったのだが。

市馬は例によって相撲甚句で喉を鳴らしてご満悦であった。 相変わらずだなこの人は。
まくらも相撲についてだったので、それこそ前日の白酒のように相撲の噺でも演るのかと思ったが、
「親子酒」だったのにはちょっと肩透かしを喰らった感じではあった。
結局、相撲甚句が唄いたかっただけなのね。

披露口上では入門当時からの文菊の修行の様子が語られたが、
師匠・圓菊には相当絞られたような話であった。
時としてイジメにも近いものであった、と云う総領弟子菊龍の言葉にドキリともさせられた。
それでも圓菊自らの稽古を一番受けていたのも文菊ではなかったかとのこと。
74歳の時に入門して来た一番末の弟子、つけられた稽古のせいか落語に少し若さが足りないと菊龍。
文菊の老成した感じはそのあたりにルーツがあったのかと、妙に納得した。

「 抜け雀 」にはこれと云った個性は感じられず、良く言えば真っ当な運びであった。
真打になって四ヶ月、まだまだその興奮のほとぼりも冷めていないであろう。
春から夏にかけてくらいには、落ち着いた文菊が見られるのではなかろうか。
独演会も楽しみだが、いずれ寄席の主任を務めるところを楽しみに待ちたい。

はねてから会場外で湯島に電話を入れてみる。 女将の店は空いているようだ。
本来は電話などせずにふらっと飲み屋へ寄る流れが好きなのだが、
湯島に限っては満席での門前払いが何度か続いたこともあり、
家とは反対方向なので無駄足は避けたく、確認しないと危なっかしい。

年明け初の顔見せ。 年末に吉四六の壷を干したので新しいのを入れる。
新年早々、新しく酒の封を切るのは気持ちの良いものだ。
お通しを貰ってから烏賊の子と大根の煮付、肉詰め蓮根の揚げ物を肴に飲んだ。
女将はダイバー繋がりであるが、正月以降まだダイバー仲間とは会っていないとのこと。
年明け早々に餃子屋に集って飲んだのだが、誘えば良かったねと話しているうちに、
近々自分の仕切りで飲み会をやると約束してしまった。
人を集めるなら土曜だが、女将は二月から今まで休んでいた土曜も店を開けると言う。
九時まで店をやってから駆けつけるので土曜が良いと言うが、
駆けつけたって宴席に落ち着く頃には十時だろう。
うーむ、どうしたものか・・・夜更かしな飲み会に面子が集まるだろうか。
 
 
  1. 2013/01/18(金) 23:59:37|
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『 第31回 白酒ひとり 』 白酒独演会 於 国立演芸場 / 平成二五年一月一六日

小町 / さん坊
花筏 / 白酒
天災 / 白酒

(仲入り)

妾馬 / 白酒


半蔵門駅では小諸そばに寄ろうが寄るまいが、前寄りに乗れば良いのをすっかり忘れていた。
小諸に寄るには後ろではなかったかと勘違いをして、
地下鉄の車両内、ホーム、改札外の地下道と都合一往復半してしまった。
しかし下北沢の時と同様、今回のしくじりで今後間違えることはないだろう。
そんな無駄足を踏んで小諸そばへ立ち寄って、もりそばを手繰ってから国立演芸場へ。

昨年最後の落語会が白酒であった。 今年の初笑いも白酒である。
寄席も正月ニ之席までは正月気分、落語のうちでは今月は二十日まで正月興行なのだ。

「 花筏 」 は初めて聴く相撲の噺。
「 佐野山 」 や 「 阿武松 」 くらいしか知らなかった。
「 千早ふる 」 も相撲の噺と言えなくもないか。
今、初場所をやっている。 相撲も日本人力士がもう少し頑張らないと盛り上がりに欠ける。

すもうは “ 角力 ” とも書く。 相撲り合うよりこちらの方が良い字面だ。
“ 角界 ” なる言葉もこちらから来ている。
中国の武術の力比べを意味する「角力」を「すもう」と読ませて使用していたことの名残。だそうだ。

江戸の頃は落語と角力は庶民の娯楽として随分と身近だったと聞く。
反して歌舞伎は相当に高額だったので、気軽に楽しめるものではなかったようだ。
ちょっと調べてみると、今は角力も結構な席料を取る。
初場所両国国技館、4人マス席Aは四人分で45,200円、一人一万以上である。
諸々みやげが付くと聞いたことがあるが、それにしてもいい値段だ。
ずっと下を見ていくと2階椅子C席で3,800円が一番リーズナブル。 これで漸く落語会並の料金になる。
規模も中身の全然違うので比べようはないが、自分の娯楽がお手頃で良かった。

去年のうちに確保したチケットがそれなりにあるのだが、
年明けから三月いっぱい、仕事のスケジュールが少々タイトになってしまった。
取り敢えず、三月までは今確保してある分だけで追加は自重することに。
(それでも当日暇が取れたら行きたいのがひとつあるんだけど)
まずは手持ちのチケットが無駄にならずに行かれたら御の字と云うことで。
予定は今回を除いて三月末までに十二の会が入っている。
平日の会が多いので、皆勤とは行かないかも知れないな。
 
 
  1. 2013/01/17(木) 23:59:22|
  2. 演芸など
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007 スカイフォール - Skyfall - 於 バルト9 シアター8

昨年12月初旬観賞。

ダニエル・クレイグのボンドを 『 カジノ・ロワイヤル 』 で観た時の興奮は今でも憶えている。
それまでの 007 とは全く異質のこの男は正にキャラが立っていて魅力的なエージェントだった。
設定としてはまだ 00(ダブルオー)になりたて、稚拙で未熟であった。
これからこの男が強靭な 007 に成長して行くのがこの新シリーズの根幹なのかと期待も膨らんだ。

しかし続編の 『 慰めの報酬 』 は期待が大きかったせいもあってか、今ひとつであった。
ストーリーが 『 カジノ・ロワイヤル 』 直後から始まるのだが、
その辺の復習を怠ったために筋の前後を俯瞰して見るだけの情報が頭に入っていなかったせいもある。
それを差し引いても、あぁこのシリーズもまた従前の如くなってしまうのかと・・・

ところが 『 スカイフォール 』 は 『 カジノ・ロワイヤル 』 にも況して渋みが効いていた訳で。

『 カジノ・ロワイヤル 』 では漸く00(ダブルオー)を取得したばかりだった筈のボンドは、
本作では随分と老けた感じ、ベテランとして描かれている。
銃創を伴う大きな怪我をして、体力も落ちエージェントとして必要な鋭利な感覚も鈍りつつある。
最早 MI6 のエースとは言い難いピークを過ぎた男。

その感じが堪らなく琴線に触れるのは自分の年齢もあるのかも知れない。
本作のボンドの魅力について、グッと来る客層はある程度絞られて来るように思う。
(正しくは同じシーン、或いは台詞でグッと来るかどうか・・・)
そこに描かれているのはスーパーヒーローなスパイ像ではなく、もっと別のもの、
一己の人間としての誇りや矜持、国家や仕事に対する姿勢、
本作が纏っている、ボンドが生きて来た時間の核心に迫るヴェールを幾重も開いて行くのには、
多少は年齢を重ねていないと難しいかも知れない。


Skyfall
skyfall (C) 2012 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.


次回作は早くも来年らしい。
前二作に対して、随分と大人になってしまった本作のボンド。
次に現れるボンドは、どんな陰を纏い、皺を刻んでいるのだろう。



さて、これで昨年観た映画についての記事はおしまい。
去年は全部で35本の作品を映画館で観た。
記事として取り上げたものばかりではないので、未掲載の作品の一覧をタイトルだけ。


『 STAR WARS Ⅰ ファントム・メナス 』3D版
『 ドライヴ 』
『 SAFE 』
『 ル・アーヴルの靴みがき 』
『 虚空の鎮魂歌 』
『 ホビット 思いがけない冒険 』


敢えて書くことがなかった言ってしまうと身も蓋もないが、
その作品への思い入れや、その時の気分や忙しさも併せて、上梓には至らなかった次第。

全35本の中からベスト洋画やベスト邦画を選ぶことも敢えてしないでおく。
ジャンルも作風も千差万別なので、選択に窮するのも正直なところ、
良い映画を沢山観られて良い2012年であった。

2013年も甲乙つけ難い作品が並ぶことを期待したい。
 
 
  1. 2013/01/12(土) 23:59:39|
  2. フォト・キネマ・アートとか
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アルゴ - Argo - 於 ユナイテッド・シネマ としまえん No.2 スクリーン

なかなかここに書き込む時間が取れず、気分にならない。
例年どおり気忙しく、実際に忙しい時期に入って来た。
それでも今回とあと一回、去年の映画について書き留めておきたい。

11月初旬鑑賞。 『 アルゴ 』。

1979年、イランの革命に巻き込まれた米大使館員達を国外脱出させる為、
米国務省とCIAが彼らをカナダの偽SF映画のロケハン隊にでっち上げたと云う実話に基づいた物語。

この作品は友人の評価が高かったのでノーマークから一転観に行ったのだが、なかなかの拾い物であった。
この手の脱出劇と云うと、差異はあるが 『 キリングフィールド 』 が思い出される。
しかしあの作品ほどの悲壮感はない。
本作はもっと軽妙な作りだが、それでもスリルは味わえ緊張緊迫の展開は見応え十分であった。

イラン革命。パーレビ国王、ホメイニ氏、名前は知っていても当時中2だった自分には無縁な出来事。
学園祭執行委員、漫画、スキー、女の子・・・そんなもので頭の中が出来ていた時代。

そもそもこの国外脱出作戦が極秘扱いとなり、情報が開示されたのは18年後のクリントン政権であった。
世の誰もが知らぬところで、この小さな作戦は密やかに行われていたのだ。


Argo
(C)2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.



劇中に登場する偽SF映画のタイトルが 『 アルゴ 』。
当時は世の中が 『 スター・ウォーズ 』 の影響でSF映画を粗製濫造していた時代。
その時流に乗って、イランの広漠としたロケーションを求めて取材に訪れると云う筋立ては悪くない。
実際にあった脚本を購入、配役も決め製作発表は世界配信。
お膳立ては実際の映画と同じプロセスに沿って迅速に行われ、
作戦の立案者であるCIA人質奪回担当のトニー・メンデスが製作補を名乗ってイラン入り。
大使館占拠の際、カナダ大使私邸に逃げ込んだ米大使館員6人の救出を企てる。

彼等は米国人であることがバレれば即処刑の立場にある。
カナダ人になりすまし、映画のロケハン隊になりすまし、架空の人物のプロフィールを頭に叩き込む。
実際にロケハンに出掛け、予定の取材をこなした後に、入国記録がない空港で出国を試みる。
大使館を占拠した革命軍はやがて職員名簿から6名が欠けていることに気づく。
逃げる者、追う者、時間との戦いが大詰めに向けて観る者を惹き込んで行く。
 
どこまでが事実に基づき、どこからが脚色なのかは詳らかではないが、
とてもリアリティがありながら、どこか絵空事の馬鹿らしさ胡散臭さも備えていて、その匙加減が巧い。
米国の伏せられた過去の栄冠に強力なスポットを当てるような陶酔と云うか、力みがない。
そんな力の抜け具合が、この作品に嫌味を感じない所以なのだと思う。

恐らくショーレースには名を連ねる作品であろうと思いつつ映画館を後にした。
ベン・アフレックは監督として今後も目が離せない存在のようだ。

(※ ゴールデングローブ賞はドラマ部門・作品賞と監督賞を受賞したようだ)
 
 
 
  1. 2013/01/11(金) 18:27:39|
  2. フォト・キネマ・アートとか
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アイアン・スカイ - Iron Sky - 於 新宿武蔵野館 2

第2次世界大戦後、ナチス第三帝国の一部のエリートが密かに月の裏側へと逃亡。
そこに秘密基地を作り潜伏。 そして2018年、満を持して地球侵略を企てる。

鑑賞は昨年11月初旬。

まぁ荒唐無稽なおバカSF映画である。
随所にブラックなパロディとコメディの要素が散りばめられていて、なかなか面白かった。
ミリタリーな要素も、詳しい友人によればそこそこ凝った作りになっていたようだ。


Iron Sky
(C)2012 Blind Spot Pictures, 27 Film Productions, New Holland Pictures. ALL RIGHTS RESERVED.


この映画を取り上げたのは作品自体についてと云うよりも、
ナチスと現ドイツ連邦共和国について常々思っていることを書き留めようと思ったからだ。

ナチスは映画の素材として数多の戦争モノに登場する。敵対国として描くには恰好の素材であろう。
第三帝国の興亡は歴史上の事実であり、その所業は誰もが認め知るところだ。
悪いヤツとして描く上で、良心の呵責なきところにそのキャラクターはある。

しかし映画と云うジャンルのこととは云え、現ドイツの人々はこうした扱いをどう捉えているのか、
同じ敗戦国の我が国に置き換えて考えつつ、これが常々思っている疑問なのだ。 

我が隣国の作る映画やドラマにも関東軍をはじめとする旧帝国軍の所業を描いたものがあるようだが、
それらが我が国で賑々しく上映されることはない。
歴史上の認識の違いとか、補償問題は解決済みとか、そう云う政治レベルでの談話は耳に入るが、
文化交流の中でそれがあからさまに語られるところを自分の経験上では見たことも聞いたこともない。
それは自分個人が寡聞なだけかも知れないが、終ぞ知り得ぬところだ。

ドイツ人はナチスと現ドイツは別物の割り切って、
こう云うおバカな映画でも笑って観ることが出来るのだろうか?
そしてもし、この映画の侵略者が関東軍に入れ替わって月の裏から現れるとしたら、
我々はそれを観てどんな気分になるのだろうか・・・?
そうは言っても、自分は関東軍についての知識なんて殆ど無いのだけれど・・・

これはもうずっと前から抱いている疑問であり、モヤモヤなのである。
 
 
  1. 2013/01/09(水) 23:59:59|
  2. フォト・キネマ・アートとか
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ボーン・レガシー - The Bourne Legacy - 於 TOHOシネマズ日劇 スクリーン1

年末はギリギリまで懸案事項に振り回されて、その反動もあって三が日は寝正月。
年賀状は未だ真っ白で、作ってあったデータを寒中見舞いに変更だけはし終えた。
そんなだらしない年頭である。

今月は中旬までここで書くような外出もないので、
去年観た映画のうち、年末までにレビュー出来なかった数本について書こう。
そんな一本、『 ボーン・レガシー 』。昨年十月下旬鑑賞。

近年のサスペンスアクションの中では特にお気に入りだったボーン三部作の続編。
続編ではあるが、時系列としては前シリーズとダブっている。

まぁ何と言っても前シリーズの印象が強烈だったこともあり、期待半分で観に行った。
その身構えが幸い(?)してか、それほどガッカリな思いをすることはなかった。
単独の一本として評価するとまずまずであったが、本作もシリーズ化される訳で、
これからの展開で評価も変わっていくと思われる。
ただ最近の傾向として、こうした三部作ものはよくある手法であり、
単独の作品としてのクォリティを見ると迫力や魅力に欠ける感が否めない。
観終わった時の何かしらの積み残し、遣り残し感が映画を楽しんだ充足感をスポイルしてしまうからだろう。


The Bourne Legacy
(C)2012 Universal Studios. All Rights Reserved.


あとは主人公の存在感の話になるのだが・・・
やはりジェイソン・ボーンあってのアーロン・クロスなので
ミステリアスな部分が欠如してしまったのは致し方ないところだろう。
ボーンとは何者か、と云う前三部作に絶えず付き纏った謎の部分がアーロンにはない。
既にある程度までネタバレされた人物像がそこにあり、その点でスタートラインが厳しかったかも知れない。

色々書いたが、結論としては総じて良い出来であったと思う。
ハイテクノロジーと超人的肉体や能力とのコラボレーションは今時のアクション映画のスタンダードと言えよう。
その辺の緊張感やスピード感はエスカレートして行きながらまだ暫くは続く潮流ではないかと思っている。
スタローンやシュヴァルツェネガーのような肉体派の時代は遥か昔、今や細マッチョのインテリがヒーローなのである。
  1. 2013/01/08(火) 23:59:18|
  2. フォト・キネマ・アートとか
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 良速

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- りょうそく - と申します。
 
九山八海  花鳥風月
東奔西走  南船北馬
美酒嘉肴  羽化登仙
歌舞歓楽  一竿風月
謹厚慎重  天空海闊

そんな感じでまいります。

.......................

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