七人の敵

男、閾を跨げば七人の敵と数多なる素晴らしきものごとあり。 都会から山河海島まで、外出先でのよしなしごとを。

キネマ寸評  2011年

昨年の大晦日に前のブログを止めてから 七敵 をはじめる四月までに観た映画と、
七敵 をはじめてから特段、記事として取り上げなかった作品を五行寸評でまとめておこう。


『トロン・レガシー』 (1月)
前作は28年前だそうだ。 当時は映画に小遣いを割けるほどの余裕はなかった。
どんな話なのかも良く知らない作品の続編ではあったが、単独で楽しめた。
実世界は2Dで、PCシステム内の世界を3Dで表現する手法は面白かった。
結局のところ父子愛みたいな話の流れ。 最近はこの手のプロットが非常に多い。
確かに人は一人では生きていけないが、ランボーみたいに破天荒で孤独な超人が隠れて久しい。

『アンストッパブル』 (1月)
機関車の暴走と云うのは既に古典の部類に入るだろう。
巨大で圧倒的な馬力を象徴する意思なきものが突き進む様は単純に恐ろしい。
スピルバーグの『激突!』が恐ろしかったのはトレーラータンクローリーが
運転手を排除して演出されたからで、それに通ずるものがこの作品にもあった。
熊や鮫の怖さとは質が違う。それらとの比較で甲乙はつけ難いが、怖いものは怖い。

『キックアス』 (1月)
きちんと筋は通っているがカルトムービーである。 だから理屈で観てはいけないのだが・・・
どうも11歳の少女が銃器を使って大人を殺戮していく様は気持ちの良いものではなかった。
隣席の青年など劇中曲に合わせて首を縦振りのノリノリで観ていた・・・ゲンナリである。
アニメやコミックなら何と云うこともなく観られたのだろう。 実写の威力は侮れぬ。
面白かったが楽しめなかった。 続編がありそうなラストはお約束、まぁ出来たら観ちゃうだろうな。

『ソウル・キッチン』 (2月)
てっきりアメリカ映画かと思い込んでいたらドイツ=フランス=イタリア合作だった。
節操のないジャンクフードメニューが却って町の人には愛されていたハンブルグの平凡なレストラン。
事情があって酒癖は悪いが腕の良いコックを雇ってメニューは一変、店は繁盛するが・・・
登場人物のキャラが立っていてなかなか面白かったが、もう少し料理の演出が欲しかった。
最近の邦画に比べると、食のディテールの表現に物足りなさが残った。まぁ、ドイツだし。

『 180°SOUTH 』 (2月)
patagonia と THE NORTH FACE の創始者が知己の中だとは、寡聞にも知らなかった。
二人の若き日のパタゴニアへの旅の記録と、それをなぞる現代の若者達のライフドキュメンタリー。
最終目的に対する執着が薄く、緩い感じは古き好き風情と現代のスロゥライフのミクスチュア。
『ENSLESS SUMMER 2』を思わせるスローなロードムービー、映像もキレイで良作だと思うが、
現代社会への穏やかな批判と示唆も含んで、その垢抜けた感じが少々落ち着かなくもある。 映像が素晴らしい。


以上、七敵 開始前の今年観た作品たち。

以下、七敵 開始後、カテゴリ “フォト・キネマとか” で取り上げなかった作品たち。

『スカイライン-征服-』 (6月)
「世界侵略:ロサンゼルス決戦」と設定は酷似しているが、正直こちらはかなり見劣りする。
謎に包んでおく部分はあって良いのだが、それが意味を持っていると云うより放ったらかし感が強い。
登場人物も宇宙人もキャラクターが薄っぺらくて感情移入がし辛く、ワクワク感にも乏しい。
ラストも尻切れトンボで、あぁここでお金がなくなっちゃったんだね・・・そんな印象。
正直、書くことがなくて5行埋まらない。


『東京公園』 (6月)
井川遥のルックスが、かなり好きである。 演技については役柄によってムラがあるけれど。
東京都内の公園を舞台に話が進む。 主人公は公園を愛している写真家志望の美青年。
しかし彼の持っている公園への“愛”が今ひとつ伝わってこない。 作り込みがちょっと不足している。
映像ももっとキレイに撮れなかったのか。 この映画を観て実際にその公園に行って見たいとは思えなかった。
何となく流行のスロウな空気感を出しているが、核になるものが分からなくて漂う不安定さが落ち着かなかった。


『LIVE IN A DAY 地球上のある一日の物語』 (9月)
2010年7月24日(土)の動画をYouTubeで募集、世界192カ国から、のべ80,000本、4,500時間超の作品が投稿された。
それをリドリー&トニー・スコット兄弟が総指揮をとって一本の映画に仕立てた。
世界中でありふれた一日を追う。 色々なことが起きている。 地球が回っていることを強く実感する体験だった。
冒頭は日本の父子家庭の朝。亡き母の遺影に小さな男の子が手を合わせるシーンに感情を全部持って行かれた。
試みは面白く一度しか使えない手法は実験的でかなり興味深かったが、個人的には冒頭の日本人父子が全てだった。

『東京オアシス』 (10月)
細かい分類はすっ飛ばして 『かもめ食堂』 の系譜。 ただし本作ではあまり“食”が前面に出て来ない。
それで気づくのは食事のシーンが欠落したことでとても退屈な世界観だったのだなと云うこと。
一連の作品を通して楽しげな食事のシーンがあったものほど印象が強く、面白い映画だったと振り返られる。
自分に、あの極薄味なトピックス無きストーリーを堪能する感性が無いだけと開き直ってしまおうか。
『プール』からこっちはスールキートス制作。 次の一手がどんな作品になるのかが気になる。


以上、七敵 では多少でも書きたいことがあった作品は良し悪しを問わず取り上げることにしたが、
それでも書きたいことがなかった作品もあり、そのこぼれたものの足跡だけはこんな形で残しておく。
今年は計30本の映画を観た。 突出した作品がパッと浮かばないのが正直なところ。
特に邦画に当たりが無かった。 強いて挙げれば 『コクリコ坂から』(8/23記事) は良かった。
海外作品では 『180° SOUTH』(今回記事) の映像が美しく印象的であったのと、
『127時間』(6/21記事) のドキュメンタリーとしての迫力が印象的であった。
振り返ると平均点は高かったように思うが、やはり年に一本は “ 断トツ ” が欲しいものだ。

実はもう一本年内に観たい映画がある。
明日、時間が出来たら行こうと思っているが、明晩は今年最後の落語も入っているので昼間の気分次第かな。
 
 
  1. 2011/12/29(木) 11:06:05|
  2. フォト・キネマ・アートとか
  3. | コメント:2
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コメント

to パール

コクリコをご覧になったのですね。
ジブリは作品ごとに好みも随分分かれるので、
当方がきっかけだけに空振りに終わらなかったことを願うばかりです。

まぁ、映画に限らずどんなジャンルでも嗜好品のお勧めは難しいですけどね。
  1. 2011/12/31(土) 11:28:28 |
  2. URL |
  3. 良速 #TIXpuh1.
  4. [ 編集 ]

『コクリコ坂から』実は わたしも、あの記事のあと見に行きました^^
ジブリの作品を映画館で観たのは初めてだったけど、
家で観るのとはまた違って、いいものだなって。
建物とか凝ってましたよね。そして、すがすがしい後味の映画でした。
  1. 2011/12/31(土) 08:42:47 |
  2. URL |
  3. パール #HFfpW636
  4. [ 編集 ]

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