七人の敵

男、閾を跨げば七人の敵と数多なる素晴らしきものごとあり。 都会から山河海島まで、外出先でのよしなしごとを。

『 五街道四門三月双蝶々初夜 』 雲助・白酒・馬石・龍玉 於 日本橋劇場 / 平成二四年三月一四日

長屋 / 白酒
定吉殺し / 龍玉
権九郎殺し -芝居掛相勤申上候- / 雲助

(仲入り)

雪の子別れ / 馬石


いたちや主催の雲助月極十番が終わってひと月。
皆勤客としては今回の興行は番外編とでも云おうか、アルバムで云えばボーナストラックみたいな気分であった。

通いなれた日本橋劇場に花道が設えてある。 今宵の趣向に気分が高まる。

花道から白酒登場。 拍手を受けながら二階席へ両手を振って見せる。 なんかプロレスラーみたいだ。
高座に上がると短いまくら、今宵の趣旨を短く説明。 師独特のシニカルな言い回しが端々に見え隠れする。
師の子供は愛嬌があるだけに長吉の小憎らしさ、子供だけが持つ邪気が浮き彫りになった長吉少年時代であった。

龍玉の番頭・権九郎、長吉の悪性を看破した機転の利き様から、主家への盗みを脅迫するまでの変貌ぶりに見応えあり。
長吉の二面性も十分に表現されていて、師の目力と云おうか目の演技力と云おうか、なかなかのもの。
雲助門下は白酒のみ聴いていたが、他の二師を聴き逃していたのは迂闊であった。

二席終わって幕引き、場内も明るくなって仲入りの雰囲気にパラパラと席を離れる客。
自分もゼリー飲料を流し込んだり目薬を注したりしていると下座で太鼓がなって場内が暗転、幕が開いた。
高座が取り払われ舞台に敷かれた毛氈の上に雲助が・・・仲入りではなく続けて権九郎殺しが始まった。
場内がざわつく、意表を突かれた格好。 席を離れていた人がワラワラと戻って来る。
場内が暗くなっているので間誤付く人もいて、黒い影が舞台を遮って最初の2~3分客席の空気が鎮まらない。
席に戻って来られなかった人も多い、恐らく後ろで立ち見をしているのだろう。
後でTwitterで検索したら20人くらいがホワイエで軽食を取っていたらしい。 やはり冒頭を見逃したようだ。
通常では四席の会なら二席終わって仲入りが多いから無理もない。
噺の流れとしては芝居掛の権九郎殺しまで一気に見せるのは良い構成だったと思うが、
ここは芝居の次第が分かるように貼り紙か栞で主催者側からの明確な周知があった方が良かっただろう。
またあの幕間で、会場を明るくせずに場繋ぎをしていたら勘違いする客もなかったであろう。
自分も席を離れこそしなかったが、右往左往する離席者が視界に入った冒頭は惜しいものがあった。

で、雲助の芝居掛による権九郎殺し。 柝に合わせて鋭い動きを見せる師の演技が素晴らしい。
オレは落語を聴きにいている筈だが、この世界はいったい・・・そんな戸惑いの中、緊迫した場面に惹き込まれる。
やがて権九郎殺害、花道に立つと尻っ端折り、頬被り。奥州に逃れる体でダダダッと駆け出す姿が格好良かった。

本当の仲入りに入って暫し休憩。 先ほどの件を愚痴るおばさん。いやもっと騒ぎになるかと思ったがみな大人だ。

花道から登場の馬石の仕草に雰囲気がある。 まるで役者のようだ。 師もこれが初聴きとなる。
息子の悪事に世間を追われた夫婦の悲哀が会場の静寂に染み入るようだ。 寒風吹き荒ぶ中、御貰いをする母親が哀れ。
最早真っ当には戻れない親子の仲ももどかしい再会の後、雪の降る中、吾妻橋にて長吉が御用となる。

拍手喝采。 一旦引かれた幕が開き、高座脇左右に四師が正座にて師匠雲助が一言ご挨拶。 再び、拍手喝采。
一同御礼で緞帳が下り、追い出し。

普段とは違う芝居仕立ての構成はなかなか見応えがあり面白かった。 いたちや らしい興行だったとも思う。
遣ってる方は大真面目、客も良いものを見せて貰ったと云うのが大方の感想であったろう。
へそ曲がりとしては、絶賛するなら歌舞伎や芝居を観れば良いのではとも思ったりするが、
珍しいものを楽しませて貰った、堪能したと云うのが素直な感想でもある。

それでも最後のご挨拶の際、上手高座際にいた白酒の何とも云えない笑い出す一歩手前のような表情に、
何か同志の意気とでも云おうか、我が意を得たりと思ったのは自分だけだろうか。

今回は周りの客に恵まれず。 今ひとつ集中し切れなかったのが心残り。
前席、女性なのに汗臭い。 空調の加減でたまに鼻に付いた。
通路を挟んだ隣の女性、何か指で引っ掻いているのか、カリ・・・カリ・・・と規則的なノイズ。
 
 
  1. 2012/03/15(木) 12:56:32|
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