七人の敵

男、閾を跨げば七人の敵と数多なる素晴らしきものごとあり。 都会から山河海島まで、外出先での徒然を。

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メランコリア - Melancholia - 於 早稲田松竹

新宿で展示会を観た足で高田馬場へ移動、早稲田松竹の最終上映回に800円で入館。
以前この函で予告編を観た 「 メランコリア 」 を鑑賞。

太陽の裏から突如現れ地球に接近してくる巨大な星 メランコリア。
地球の数十、数百倍もあるその星はフライバイの末 地球から遠ざかるのか、
それともその圧倒的な質量で衝突し地球を破壊してしまうのか。
科学者達は衝突を否定し、世間では地球の終焉がまことしやかに語られる。
果たして真実はどちらなのか・・・その結末は上空を覆うメランコリアと共に静かに近づいてくる。

フォン・トリアー監督はドイツのロマン主義芸術からの影響に言及したとの記述を読んだが、
ドイツロマン主義と云われてピンと来るほど美術史に明るくないのが残念。
もっと勉強しておけば良かった。 ・・・今からでも遅くはないか。

ワーグナーの 「 トリスタンとイゾルデ 」 が流れる中、耽美な映像が大画面に映し出される。
主人公のひとりである花嫁の姿はミレーの 「 オフィーリア 」 を連想させ、作中にもその絵画が登場する。
花婿が花嫁に贈った林檎の苗木が植えられた土地の写真は、
ルター或いはゲオルギウの終末に関する思索へのオマージュなのではと自分は捉えたけれど、
それは林檎と男女を使ってパラダイスロストを暗示させたかったのかも知れない。
いずれにしろ監督の意図するものはそうしたディテールに込められていたように思う。

天体衝突と云えば古くは 「 メテオ 」 から 「 ディープインパクト 」「 アルマゲドン 」 などが思い出されるが、
一様にして人類が自らの知恵と技術と勇気を持ってそれに対峙するストーリーに仕立てている。
それに対して本作はひとつの家族を通してのみ語られ、その長女が妻たる屋敷の中だけが舞台となっている。
地球滅亡と云う世間の騒擾からは隔離された大きな屋敷、広大な庭園。
その庭園から見上げる夜空には、恐らく湖であろう美しい水面の広がる眺望を前景に、
恐ろしくも美しい巨大なメランコリアが浮かんでいる。
その詩的な情景ひとつ取っても、今までにない切り口と視点で描かれていることに引き込まれるのだった。


Melancholia
(C)2011 Zentropa Entertainments ApS27


この物語を文章で表現するなら、ブラットベリの小説のような世界観ではないかと思う。
耽美で幻想的であり、読むものに豊かな心象世界を描かせてくれるような。
しかし実際に映像として見せられると、これほどまでに胸に重苦しくなるものかと驚きを禁じえなかった。
10万㎞/h で地球に接近してくる星メランコリアはあまりにも暴力的に大きく地球を圧倒していながら、
夜空を覆い尽くすその青さはあまりにも美しく魅力的なのだ。

プロローグではメランコリアが地球に衝突し一瞬にして火の玉に変えてしまう映像が流れる。
果たしてそれが単なるイメージなのか、(物語の中で)実際に起きる事実なのか、
ラストへ向け息を詰めて見守る緊張感は久々に覚える感覚であった。

ラストは伏せておくとしても、観終わって何が切なかったかと云えば、
地球がなくなってしまえばその終わりを誰ひとりとして記憶し語り伝えてはくれないと云うこと。
どんな悲劇であれ、この星の上での出来事であればそれを見守った人々により後世に語り継がれる。
けれどこの星ごと消え去ってしまうとなれば、事実も記憶も何もかもが無かった事になってしまう。
何も残らず消えてしまうと云う、
本当の意味での虚無感と喪失感を胸に見上げるメランコリアは、
それでも人々の目に美しいものとして映るのだろうか。
 
 
  1. 2012/06/06(水) 12:08:57|
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