七人の敵

男、閾を跨げば七人の敵と数多なる素晴らしきものごとあり。 都会から山河海島まで、外出先での徒然を。

フライト - FLIGHT - 於 ユナイテッド・シネマ としまえん 5スクリーン

克己と云う言葉があるが、
強い意志を持って自分を律することには得手不得手がある。
主人公は不得手な人間であった。
自らの不安や恐怖を酒で抑え込む。
“酒の力を借りる”と云うが、酒は力など貸してくれない。
それは幻想であり、それ自体が酔って見る錯覚なのだ。

絶体絶命のアクシデントを切り抜けて乗客乗員102人中96人の命を救った不時着。
その時、機長である主人公は酒を飲んでいた。 パイロットにあってはならないことだ。
その不時着はまさに神業であった。 彼の判断と技量は人並みはずれたものであった。
しかし乗客4人と乗員2人の命が失われた。 もし彼が飲酒をしていなかったとしたら・・・
その事実は隠蔽され、彼は英雄として一躍 時の人となる。

葛藤は続く、自衛と悔恨の狭間で大きく揺れる。
しかしこの場合、彼の気持ちを健全に晴らすのに為すべきことは明々白々。
果たして彼はその結論に辿り着くことが出来るのか・・・。

プロットに真新しさはない。 過去の作品にも見受けられるものだ。
それでも観終わってから、主人公の葛藤や周囲の人々の行動がジワジワと沁みこんで来た。
判断基準が明白で単純なだけ、それでも複雑に綾なす人間の心理がリアルであった。
是々非々な判断は、彼の周りの酌量や同情或いは社会的体裁によって阻まれる。
それは彼本人の擁護だけでなく、彼に関わる多くの人々にも向けられたものだから。


FLIGHT
(C) 2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


克己とは別に矜持と云う言葉がある。
誇りとも己惚れとも取られる言葉だが、ひとつ他国語の力を借りればプライドであろう。
これもまた様々な判断を度外視してしまう厄介な言葉ではある。
しかし究極の判断を下す時に必要な図抜けたもの、ブレイクスルーとは、
そう云う力を必要とする場合が儘あると云う事であろう。

他人の尊厳を傷つけて守られる自らの尊厳などない。

派手な不時着シーンがトピックになりがちな作品だが、
そこに描かれていたものは当初の心構えより随分深いものであったと、しみじみ思うのである。
 
 
  1. 2013/03/10(日) 23:59:26|
  2. フォト・キネマ・アートとか
  3. | コメント:1
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  1. 2013/03/12(火) 12:58:58 |
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