七人の敵

男、閾を跨げば七人の敵と数多なる素晴らしきものごとあり。 都会から山河海島まで、外出先での徒然を。

『 日本の民家 一九五五年 』 二川幸夫・建築写真の原点 於 パナソニック汐留ミュージアム

アウトドアライフスタイルの師匠・イソGのセカンドハウスは信州の山間の集落にある。
古民家と云うほど古くはないが、養蚕から煙草農家への変遷の面影を残す味わい深い家屋だ。
そこに無造作に置いてある岩波写真文庫の新風土記がなかなか面白く、
訪れる度に暫し読み耽ってしまうのだった。
古き好き日本、と云っても四季の表情が豊かな分、暮らすには厳しいこの国の自然環境を顧みれば、
書籍の中の知識だからこそ面白いなどと言っていられるのだなと自分を戒めたりして。

その時代の不便をを想像すればするほど、回帰などとは軽々しく言えなくなる。
それでも、丸々先祖帰りせずとも今の生活に取り入れられる何かしらの智恵や知識、ヒント、
新風土記の中にはそうしたものが隠れているような気にはなって来るのである。
我々が都会で営んでいる生活は、その本の中にあるそれとは随分とかけ離れてしまった。
その是非は単純に下せないにしても、残しておいた方が良かったものを今一度掬い上げるには、
今の気風は丁度良いタイミングなのではと思うのである。


futagawap
(C)Photo:Yukio Futagawa


建築に携わっている者で二川幸夫の名を知らぬ人は稀有であろう。
日本の建築写真の第一人者であり、写真建築誌GAの生みの親だ。
その二川氏が二十歳の時から全国を訪ね歩き撮影した民家の写真は、
1957年から三年を費やし十篇の写真集「日本の民家」に纏められ広く世間に知られることとなった。

そこには今から約六十年前の日本の姿が建築を通して写し出されており、
今回の写真展はその一部を最新のデジタルプリントでネガから起こした七十余点を披露している。
会場構成は京都山城から始まり、山陽・四国・九州へ南下、
一旦北上して東北・関東・甲信越・北陸と巡り高山・白川で終わると云う巡回。
それぞれの地方の特色を分かり易く観ることが出来、
建物の造りに気候風土を感じられる楽しい内容となっている。

個人的にはやはり身近に感じられる関東甲信越から友人の郷里である北陸や、
嘗て訪れたことのある白川の原風景などに多くの時間、足が止まった。
何となく自分の記憶の隅に眠っている風土の記憶が呼び覚まされるような、
そんな不思議な心持ちにさせてくれる良質な写真展であり、
前述した岩波の新風土記を思い出させるものであった。

建築写真に特化しているので基本、人物の写り込みは少ない。 航空写真に散見されるくらい。
それでも時代の空気感とでも云おうか、当時の人々の営みを感じ取ることの出来る力には目を見張る。
もともと二川氏にどれ程の写真に関する造詣があったのかは寡聞にして知らないが、
二十歳そこそこから半ばまでの短期間に現代に比べて情報網や交通手段も限られた中で、
これだけのものを残した努力と才能には只々感服する。

開催前にNHKで見た告示で知っていながら会期末になって漸く足を運んだ。今月24日(日)まで。
二川幸夫氏は今月五日に逝去された。 会期中の事であり、感慨深いものがある。
 
 
  1. 2013/03/17(日) 23:59:23|
  2. フォト・キネマ・アートとか
  3. | コメント:0
<<『人形町噺し問屋 その38 』 兼好独演会 於 日本橋社会教育会館 / 平成二五年三月一八日 | ホーム | フライト - FLIGHT - 於 ユナイテッド・シネマ としまえん 5スクリーン>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

profile

 良速

Author: 良速
  
 
- りょうそく - と申します。
 
九山八海  花鳥風月
東奔西走  南船北馬
美酒嘉肴  羽化登仙
歌舞歓楽  一竿風月
謹厚慎重  天空海闊

そんな感じでまいります。

.......................

category

旅や野遊び (55)
演芸など (300)
フォト・キネマ・アートとか (148)
道具のたぐい (36)
飲んだり食べたり (4)
徒然なるままに (12)
序 (4)
未分類 (1)

comment

calendar

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

archive

counter

search form