七人の敵

男、閾を跨げば七人の敵と数多なる素晴らしきものごとあり。 都会から山河海島まで、外出先での徒然を。

シュガーマン 奇跡に愛された男 -Searching for Sugarman - 於 シネマカリテ スクリーン2

1968年、デトロイトの場末のバーで歌っていたロドリゲス。
プロデューサーの目に留まりデビューを果たすも商業的には失敗に終わり姿を消すことになる。

南アフリカ。 経緯は不明だがロドリゲスの音源が海を渡っていた。
折りしも反アパルトヘイトの機運に彼の歌が共感を呼び、シンボルソングとなって行く。
アルバムはテープにダビングされ、やがてプロモートも曖昧なままレコードまでリリース。
若者を中心に支持された彼の歌はやがて20年に亘って幅広い世代に愛され、
ストーンズやディランと並ぶロングセラーとなって行った。

しかしロドリゲスの事は誰も知らない。
アメリカでは埋もれてしまったミュージシャンであることさえ後になって分かった事実。
消息も分からず、失意のうちにステージで拳銃自殺したと云う都市伝説さえ残っていた。
南アでひとりの男がロドリゲスの消息を追いはじめた。
そしてその先には思いがけない結果が待ち受けていた。


s-man
(C)Canfield Pictures / The Documentary Company 2012


ドキュメンタリーである。 ネタバレで先を進めよう。
ロドリゲスの消息を追う男はネット上に捜索サイトを立ち上げ、情報収集を続けた。
そこに一通のメッセージが書き込まれる。 ロドリゲスの娘を名乗る女性からだった。

ロドリゲスはデトロイトで生きていた。
建築現場で解体や改修工事に携わり、既に音楽からは遠のいた生活を送っていた。
自分が遠く南アフリカで20年以上に亘って愛されていたことも知らずに。
その事を報せるために男は渡米、ロドリゲスと会い南アへの招聘を試みた。
やがて遠い国を訪れたロドリゲスは伝説のミュージシャンとして熱狂的に迎えられた。
マスコミに取り上げられ、長いときを経て幻の男は現実の世界に姿を現したのだ。
約30年ぶりのライブ、しかも初めて訪れた国で。 公演は全て SOLD OUT。
祖国では誰も見向きもしなかった男が、異国で一躍スターの座へ上り詰めた瞬間だった。

しかしロドリゲスは何も変わらなかった。
帰国後は今までどおり建築現場で働き、穏やかな生活を送り続けた。
版権の曖昧な伝説的ロングヒットは所謂海賊盤、彼のもとには一銭の印税も入って来ない。
南アフリカでのライブ活動の収益は家族や友人のために使い、金銭への執着はいっさいなかった。
彼の人生は変わることがなかった。 プール付の豪邸も、高級車も、贅肉もつかず。
南アフリカを訪れて変化したことと云えば、
娘がその時についたガードマンと結婚し南アフリカに移住して孫を産んだこと。
遠いその地に浅からぬ縁が広がったことくらいだった。

結局ロドリゲスはスターにはならなかった。 ただひとりの歌唄いであり続けた。
彼は現在もデトロイトで今までどおりの生活を送っている。
何も変わらないその姿こそ、純粋な唄い手として彼を今も尚、輝かせている。
 
 
  1. 2013/04/25(木) 23:59:53|
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