七人の敵

男、閾を跨げば七人の敵と数多なる素晴らしきものごとあり。 都会から山河海島まで、外出先での徒然を。

冬、北信へ -信州ツーリング 2014 1/11~1/13 その2-

(前回のつづき)

腰を屈めると背丈が自分の半分位しかない様なおばちゃんが前を歩く。
「(雪の)足跡でも辿って来たか。これじゃ盗みも出来んね。」
偶然だが上手いこと所在を突き止めた自分に冗談を投げかける。
足元に気をつけろと言いながら容姿に見合わぬ速度で歩いて行く。
玄関を入って他に客の履物がないのを見て少し落胆したようにも見えた。
対面した際に自分は代表で探しに来た一人と思ったのだろう。
「わたし一人なんですよ。わざわざ戻って貰ってすみません。」
そう言うと、「なんのなんの、構わんよ。」
店に入ると早速石油ストーブに火を入れてくれた。
「ちょっと離れた隙だよ。さっきまでおったんだよ。」
そう言って外套を脱ぐとテキパキと動き回る。
セルフのお茶も自ら出してくれて、お通しがわりのおかずを卓へ。
そこまで済ませると、「雪ん中よく来なすったな。降らんで良かった。」
そう言って初めてこちらの顔をまじまじと見た。


hashiba2


やがて注文。取り敢えず初来店なので並をと考えていたのだが。
一人の客にわざわざ呼び戻したようなものだ。どうしようか。
「おらほの蕎麦はつるっと入るで。大盛でちょうどいいさ。」
大盛確定である。 朝食も摂らずに走って来たのだ。食えるだろう。
おかずと称される小皿は五つ。黒豆や沢庵、野沢菜、コゴミなどが並ぶ。
蕎麦が茹で上がるのをそれを摘みに暫し待つ・・・あぁ、ビールが欲しい。

いよいよ蕎麦が目の前に饗された。おっ、と思わせる大盛。
「正月だで、サービスしといた。」・・・う~む、手強い量である。
しかし独特の艶と色味、普段見慣れぬ蕎麦だがいかにも美味そうである。
(写真撮ってません、ご想像なりググるなり。)
つゆは黒々としている割に味は薄めであった。
田舎らしからぬ細い蕎麦を手繰り、そのつゆを絡めてひと息に啜る。
他に客が居るでもなし、おばちゃんは卓の反対側に座って様子を見ている。
「美味いっす。」 「だろ!」  顔を見合わせて二人で笑った。

おばちゃんは蕎麦のこと、富倉のことなど問わず語りに話してくれた。
こちらは祖父を発端にした我がルーツと富倉の縁について話した。
おばちゃんはえらく感心して、こちらが祖父の旧姓を告げると、
「この辺に多い名前さ。確かにここの出だな。」と得心の様子。
それで親しみが湧いたのか、更に話は込み入って行く。

店に居たのは40分位だったろうか。
「また来ます。」 「またおいで。」 の挨拶を何度も交わして店を出た。
腹の中は大盛蕎麦、胸の奥はおばちゃんの言葉で満たされていた。
良い土地に辿り着いたものだ。
先鞭をつけて道を開いて下さった高崎さんには大感謝である。

さて、旅は南へ下る。

(あとちょっと、つづく)
  1. 2014/01/18(土) 12:15:22|
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